『うみべのあさ』
ロバート・マックロスキー ぶん え
石井桃子 訳
英語の題は『One morning in Maine』
By Robert McCloskey
あらすじ
ある朝、サリーは歯磨きをするときに1本の歯が抜けそうになっている事に気がつきます。歯が生え変わることを初めて経験するサリーは、これは病気の前兆に違いないと大騒ぎ。慌てて母親のところへ駆け出すと、母はサリーにそれはあなたが大きくなったという事ですよと教えます。そして、抜けた歯を枕の下に置くと願い事が叶うという事と願い事は口に出してはいけない事を伝えます。
それを聞いたサリーは、大きくなったのだからお手伝いできると潮干狩りに出かけた父親のところへ出かけます。途中でミサゴ、アビ、アザラシを見かけては「私の歯、抜けそうになっているの」と自分が大きくなったという証である歯を見せながらお話するのでした。
潮干狩りをしている父親のところへ着くと、サリーは一緒にハマグリ拾いを始めます。サリーが最初に手にした貝はとても小さなハマグリでした。「赤ちゃんの歯でさえ、未だ全て生えてないのかな」というサリーの疑問に、父はハマグリに歯は生えてない事を教えます。それを聞いたサリーは「大きなハマグリにも歯はないの?、ミサゴは?アビは?アザラシは?カモメは?と質問が止まらなくなりました。
たくさん質問をするうちに、サリーは口の中の異変に気がつきます。抜けそうになっていた歯がないのです。抜けた歯を枕の下に置いてお願いをしないと秘密のお願いが出来なくなるとサリーは悲しさを隠し切れません。今にも泣きそうな顔で抜けた歯を探します。サリーの秘密の願い事は何だったのでしょうか。
〇物語の第一歩
身の周りのものが人物の心の様子を表してます。
”The loose tooth was really and truly gone.”
”The saly mud from het fingers tasted bitter, and she made a bitter-tasting face that was almast a face like crying.”
抜けそうになっていた歯は本当になくなってしまった。彼女の指についた塩泥水は苦い味がして、苦さを表現した彼女の顔は泣きそうな表情だった。
物語を読むとき、情景が人物の心情を表すと言われます。潮干狩りしている海辺の水は海水であるため、口にするとしょっぱいことは当たり前のことです。そのしょっぱい泥水の味をbitter(ほろ苦い)と書くことで、抜けた歯を枕の下に置いて願い事をしようと思っていたのに出来なくなったという悲しさを表していると思われます。
歯の生え変わりは、おそらく小学生以上の人であれば皆さん経験しているでしょうし、抜けた歯の扱い方も地域によってそれぞれ扱い方があると思います。そんな日常起こり得る事を描いている物語です。サリーは恐らく6歳くらいで、サリーの妹は2歳くらいです。少しお姉さんなサリーと妹のやり取りは姉妹がいる方であれば、共感する場面があるだろうなと思いました。また、少し大きくなったとはいえ6歳くらいのサリーのお願い事はかわいらしいお願い事で和みます。
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